*  身近な 花 

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【3月】

シュンラン(春蘭) ラン科 多年草 花期;3~4月 場所;1号棟北側駐車場と北進入路の間

シュンランは日本を代表する野生ランの一種で、洋ランのシンビジウムの仲間です。そして、江戸時代から育種、栽培されている古典園芸植物です。

(上) 今年は1株に4~5本茎を出した。(17 3/16)

シュンランの花は皆下向きでなかなか見られない。

(下左) 横から(15 3/29)    (下右) 正面から(17 3/25)

 シュンランは早春から春に、地際から花茎を出し、その先端に淡い黄緑色の花を1輪咲かせます。地味な花ですが、その野趣、素朴さが好まれているのです。どのように好まれているかは、ホームページを検索しみると、「たたずまいは凛として孤高の雰囲気を放ち、萌え出した若芽の色彩は爽やかで、日本の早春に相応しい」とか、「シュンランはカタクリと並ぶ、スプリングエフェメラルの代表種である」と、べた褒めの記事がすぐに見つかるほどです。

 また、このラン科の植物は、菌類(キノコ)から栄養を得て生活しているという変わった性質もあります。すぐ隣にキンランが生えているので、同じ環境を分け合っているのかもしれません。


タチツボスミレ スミレ科 多年草 花期;4~5月 場所;北法面、東法面随所

日本にはスミレの仲間は変種も含めて50~70種もあるなかで、タチツボスミレはごく身近に、もっとも普通に見られるスミレである。その意味で、日本を代表するスミレである。

(写真 15 3/23 )

 花は直径1.5~2 センチで、薄紫色。葉は長さ2~4 センチの心形(ハート型)。タチツボスミレの名の「つぼ(坪)」は庭を意味していて、「庭のようにどこにでも普通に見られる」の意味。「立ち」は、スミレの花が終わって茎を上へと伸ばしてくるから、そして、「すみれ」は、その花の形が大工道具の「墨入れ」を思わせるから” との事。(ただし、この説には異論も多いようだ)

タチツボスミレの花 (左) 正面から 15 3/29   (右) 横から 花の後ろには距(きょ)がある                                                 (17 3/25)

 タチツボスミレにはもうひとつ面白い現象があります。花期を4~5 月としましたが、5月の連休の頃タチツボスミレを見に行ってください。“つぼみ”のようなものがついています。が、これは開花しません。触ってみると固くて、もう種ができている事が分かります。これは「閉鎖花」といって、開花せず自家受粉して結実しているのです。そして、開花する方の花(解放花)の結実率は低く、閉鎖花の方がもっぱら結実して種族を残す役目を担っているとの事です。

(写真右、閉鎖花。開花せずに結実している 15 5/6)

 多くの花が自家受粉を避けて、雄しべと雌しべの長さを変えたり、花粉の時期をずらしたり、さまざまな工夫をしているのに、不思議な現象ですね。

 早春には他の草に先駆けて花を咲かせて虫を呼び交配してもらい、草木が茂ってスミレが埋もれてしまってからは自家受粉で種子をつくる。解放花では遺伝子の多様化の「質」を高め、閉鎖花では子孫繁栄の「量」を図る。スミレは競争力が弱いので、このように2本立ての生存戦略をとっているらしいのです。でも、やはり不思議ですね。


雪割草(スハマソウ) キンポウゲ科 多年草 花期;2 月下旬~5 月上旬 場所;北法面

  10号棟北側法面のオオバヤシャブシの根元に生えている雪割草は、今年は3 月11 日頃に芽を出した。いつ開花するのかと時々見に行ったが、花茎が伸びてきても半開きの花を下向きにつけたままなかなか花を開かなかった。ある方にこの話をすると、「今年は寒いのでなかなか開かないのでは」との事。いっぱいに花を開いたのを確認したのは3月25日だった。翌日26日は冷たい雨の日だった。念のため見に行くと、花は半ば閉じて下向きになっていた。暖かく晴れた日には開き、寒く曇りや雨の日には閉じる。この雪割草も日光を好む植物のようだ。

(左) 芽が出てきた (3/11)

(中) 開きそうでなかなか開かない (3/24)

(右) 冷たい雨の中でまた閉じてしまった (3/26)

 (左) いっぱいに花開いた雪割草 (3/25)      (右) スハマソウの葉(15 4/2)

  雪割草は、「春早く、雪の消えるのを待ちかねて地表に顔を出す花」という意味で、サクラソウ科、キンポウゲ科、ユリ科など、7科10種類ほどの早春の花の総称として用いられています。つまり、英語圏のスプリング・エフェメラル と似た意味合いを持ってそう呼ばれているようです。

  スハマソウの葉は、花が咲き始めた時は傷んだ前年の葉が残っているが、花の終り頃に新しい葉が伸びてくる。丸みのある葉に注意。

花弁の数の違い、6枚、7枚、8枚。こんな花も珍しい。しかも花弁ではなく萼片とのこと。

  和名で「ユキワリソウ」と言った場合、正式にはサクラソウ科の全然違う植物のことを指します。

                  (写真上;サクラソウ科のユキワリソウ HPより)

 それで、これらを区別するためキンポウゲ科のミスミソウやスハマソウの仲間は「雪割草」と漢字で表現しているようです。

 ここで、ミスミソウとは葉の形が三角状の種類、スハマソウとは葉の形が、海辺の砂洲に似ているという意味で州浜草と書きます。北法面の雪割草はスハマソウです。(前ページ写真参照)

 が、この区別があまり明確ではない場合もあるようで、スハマソウはミスミソウの一品種との事。花弁は6~8枚程度でバラツキがあります。実は花弁に見えるのは萼片で、花弁はないとの事。他の品種では雄しべ雌しべも花弁のように変形するものもあるとの事で、とてもバラエティに富む花のようです。

 雪割草の各品種の自生地の分布を見れば、スハマソウは岩手県から神奈川にかけての太平洋側に分布しています。が、実はこの雪割草は高山植物ではなく平地の山野草で、育てやすい植物とのこと。江戸時代ころから栽培されてきたようです。インターネットの検索でも、雪割草の記事にはどれも、栽培上の注意なども記されています。『多摩市の目録』には野草としての報告もない。ということは、この北法面の雪割草は、植木鉢の土とともに捨てられ、ここに根付いたものと推測されます。


ハナニラ(イエイオン、イフェイオン) ユリ科 多年草 花期;3~4月 

                             場所;9号棟南側、他居住区、法面随所

 アルゼンチン原産の多年草、明治時代に園芸植物として導入され、花壇から飛び出し野草化している。わが団地でも居住区だけでなく、法面にも所々生えている。

(左) 群がって咲く星型の花が美しい (15 3/29)

(右) 居住棟の生垣の根元に植えられている

 花は白から薄紫色の6弁の花で、英名では「スプリング・スターフラワー」と呼ばれている、星型のかわいい花である。9号棟の前にいっぱいに咲いているのはきれいですね。

 茎や葉を折るとニラのような匂いがあるので和名ではハナニラと呼ばれています。ただし、食用の“花にら”とは別で、こちらは食べられません。

花の色は白から薄紫色に微妙に異なる (15 3/12, 3/25, 3/12 撮影)

 繁殖力が旺盛な植物で、球根を一度植えつけその土地に馴染んでしまうと、翌年以降よく増えて、いっそう花を咲かせるようになる。年3回の草取りにも根元まで刈り込まれても、また生えてくるのを見ると、生命力の強い植物であることが分かります。但し、園芸上の注意に、「花後も自然に枯れてくるまでは放っておきます。邪魔でも刈ってはいけません」とある。草取りに根元まで刈り込めば、光合成ができず、球根に養分を蓄えられず、いつかは消えてしまうかもしれません。(住宅周りの花をどうするか一考の余地あり)


ツルニチニチソウ(ツルビンカ)  キョウチクトウ科  多年草・亜低木

花期;3月半ば~5月  場所;2号棟北側、南側、3号棟東側など

 南ヨーロッパ、北アフリカ原産の、つる性の多年草または亜低木に分類されている。属名のビンカは「結ぶ」の意味で、つるを花輪に利用したからとのこと。

(左) ツルニチニチソウ (17 3/25)        (右) 斑入りのツルニチニチソウ (14 4/17)

 ツルニチニチソウは常緑性でつるは地面を這うように伸びるので、グランドカバーとして利用されている。しかし、生育が旺盛でつるがよく広がる植物なので、栽培上の注意に、「伸びすぎたつるは適宜間引いて整理する。植える場所をよく考えて、広げたくない場合はつるの切り戻しを定期的に行う。放っておくと、辺り一面盛大に茂ってしまう」とある。2号棟北西部の空地に植えられたツルニチニチソウも、あまりに繁茂過ぎるので、草刈り時に刈り込んでいる。

 花の色は晴天の青空に似た青紫色でキキョウを思わせるようで、別名にツルギキョウとも呼ばれている。しかし、注意すべき事はツルギキョウは全く別の植物にもある。

(写真上、ツルギキョウ (キキョウ科) HPから)

 神代植物園の「グリーンギャラリー」に、ツルニチニチソウが紹介されているが、「ツルニチニチソウと呼ばれるツルギキョウの紫が目につき‥‥」とあり、花の写真に「ツルギキョウ」とある。まったく取り違えて書いている。神代植物園ともあろうものが、こんなことでは困る。

 (神代植物園の「季節のスケッチ」には、間違いなくツルニチニチソウとあった。が、他の一般人のHPにも間違いが波及しているので要注意!)

 植物名を記す場合には、うる覚えで済ますのではなく、図鑑で確認すべきである。

(参考) 当団地北側のブリリアの市道沿いのフェンスの中に植えられているのは、花も葉も一回り小さいヒメツルニチニチソウという品種です。(写真上)


○ スプリングエフェメラルについて

「スプリング・エフェメラル」は「春の妖精」とも呼ばれていますが、直訳すれば「春の儚きものたち」で、早春の植物を言います。春、早いうちに芽を出し、すぐに花を付け、気がついた時にはもう消えてしまっている植物のことをいいます。カタクリ、フクジュソウ、イチリンソウ、ニリンソウなどを指します。

今回紹介した花では、雪割草やシュンランがその仲間です。

雪割草はこのような意味を持たせて呼ばれている事は上に記しました。

シュンランについては、ちょっとコメントが必要です。シュンランは常にヤブランに似た細い葉を伸ばしています。つまり常緑の野草です。だから厳密にはスプリング・エフェメラルとは言えないようです。しかし、先に紹介しましたように、その花のはかなさ、美しさ、希少さから、「日本のスプリング・エフェメラル」に数える声も多いのです。

【参考書】

◍ 『山渓ハンディ図鑑 6 日本のスミレ』 いがりまさし 山と渓谷社

◍ HP;Wikipedia、ヤサシイエンゲイ、みんなの趣味の園芸、他各種のページを参考にしました。

                                          (文・写真;石川)



 

【2月】

ウメ   バラ科   落葉中木   花期;2~3月   場所;バス停付近の東法面

 ウメは早春の花として親しまれているばかりでなく、梅干しや梅酒としても日本人の生活に溶け込んでいる植物であるが、原産地は中国、奈良朝初めには渡来していて、万葉集にはウメの花の和歌が数多く詠まれている。当時は中国からもたらされた香り高い文化の象徴としてもてはやされていたようだ。

  わが団地の紅梅、白梅はバス停付近の東法面にそれぞれ1本ずつ植えられている。元日に見て回った時、紅梅はすでに2~3輪咲き始めていた。白梅が咲き始めたのは1月下旬になってからである。

  ところで,ここの紅梅は『団地の植物 2014年2月(PDF)』にも書いたように、どこかくすんで、バラケた感じでいただけない。なぜなのだろう。

                                                             (写真;紅梅 2017 1/22 白梅と風景 2/8)


ハンノキ   カバノキ科   花期;11月から

  日本全国に分布、低湿地や湿原などに自生する落葉高木、成長すると高さは10~20mになる。当地では湿地ではないが主に東法面に生えている。

  わが団地には早春の花は少ないが、ウメと並んで、実はこのハンノキが春を告げている。といっても高い木の枝から垂れている尾状の花に気づく方は少ないのではと思われる。図鑑では花期が11月頃からとなっているが、望遠で写真を撮り拡大して見ても、1月はまだ固い感じ。1月下旬ころからようやくほころび始めるという感じである。

                                                    (写真;2014 2/21 尾状が雄花、赤い芽が雌花)

                        (『団地の植物 2014年2月(PDF)』参照)


クサボケ  バラ科  落葉小低木  花期;4~5月、 場所;バス停付近の東法面

  クサボケもバス停付近の東法面に生えている。白梅より植生ブロック寄り、知る人ぞ知る位置に、朱赤色とピンクがかった色の2種が数本ある。

                            (写真;赤 2015 3/24 ピンク2015 3/29)

  “クサ”というが草本(いわゆる草)ではなく低木。ボケに似ているが、小型の低木なのでこの名がついている。ボケは中国原産、このクサボケは日本原産。2月半ばには咲きだした。

 

 

 ボケとクサボケの違いを図鑑から拾い出してみると

 

 

樹高

葉の長さ

花の直径

花期

ボケ

2 m ほど

48 cm

25 cm

34

クサボケ

0.31 m

25 cm

2.53 cm

45

 

 

 このようにクサボケはボケに比べて樹高も、葉も花もやや小型。花期がずれているのが気になるが、やはり暖冬、温暖化のせいだろうか?


フキ  キク科  花期;3~5月  多年草

 フキノトウは当地では2月下旬~3月上旬頃

 フキの葉 4月頃

 春の野の楽しみはフキノトウを探すこと。冬枯れの法面に淡緑色の苞に包まれたフキノトウが顔を出しているのを見つけると、思わず「ああ、今年ももうこんな季節になったのだ」と口元がほころぶ。 (フキノトウ 2014 3/4下左)

 わが団地では2号棟東方付近の東法面と10号棟北側法面に、フキノトウが2月下旬ころから芽を出してくる。これを楽しみにされている方も多く、芽を出せば次々と摘まれていく。少し経って、その付近一帯にフキの群生が見られる。(フキの葉 2014 4/17下右)

一体、フキノトウとフキとはどのような関係があるのかと不思議に思ったことがある。フキノトウが終わってからフキ(葉)の群生が現れる。フキノトウとフキは同じ植物であるはず、フキノトウが成長してフキになるには、形が全然違う。知っておられる方にはバカみたいな疑問だが、フキノトウは芽を出せばすぐに摘まれてしまうので、全体像がイメージできなかったのだ。改めて図鑑を見て、「な~んだ、ツワブキのイメージで見ればよいのか。花の茎を伸びないうちに摘んでしまうので、それが見えないだけだったのだ」と、合点した次第(つまらない話題ですみません)。(HPから見つけたフキの花と葉  下)

 ところで、フキノトウはフキの幼蕾で、蕾が集まった頭状花である。そして、フキは雌雄異株、雄株は黄白色の頭花をつけ、雌株は白っぽい頭花をつけるとの事。過去、3年分の写真を調べたが、白い雌花だけしか見つからなかった。フキは地下茎を伸ばして増えるので、群生の中に雌雄が混じっていないのかもしれない。

    (左) フキの雌花 (2014 3/16)         (右) HPで見つけたフキの雄花


【トピックス】

タチツボスミレのロゼット

 北法面、9~10号棟北側法面でタチツボスミレのロゼットを見つけた。図鑑で調べるとスミレ属はすべて多年草とのこと。多年草ならロゼットになっておかしくない。

(写真;2017 1/30  ↓)


アメリカフウロの冬越し?

 東駐車場の南部、街灯の周辺あたりに、アメリカフウロの冬越しの姿を見つけた。アメリカフウロは 1年草なのだから、冬は枯れて、春に新たな芽を出すはず。なぜ冬に生えているのだろう。同じフウロソウ科のゲンノショウコは多年草、一部紅葉しながらも、冬でも東法面に見られる。アメリカフウロも多年草の性質もあるのだろうか?

(写真;2017 1/30 ↓)

         アメリカフウロ                   ゲンノショウコ


赤い花のマンサク

 マンサクは初春に“まず咲く”花として知られている。確か黄色いひも状の花だったはず。ところが赤い紐なのだ。場所はクロスガーデンの東側、建物と車道を区切る生垣。ここに赤色と黄色のマンサクが咲いている。じつはこれ、マルバマンサクのようだ。しばらくすると丸い葉がつくのが見られる。

なお、赤い方はマルバマンサクの品種の一つで、アカバマンサクとのこと。

(写真;2017 2/22 ↓)

                                           〔写真・文 石川〕



 

【1月】

元日の東法面

                   サツキ・紅葉と花                                          マンリョウ

        寒さが厳しいほど鮮やかな色になります         法面にはマンリョウがいっぱい実をつけています


      植物の冬越しのすがた・ロゼット

 俳句の冬の季語には、「枯野」「冬枯れ」「枯葉」「枯れ草」等など「枯れ」のつく季語が多い。“草の枯れ果ててひっそりとした冬の野。日、雨、風が寂々とわたり、荒涼とした景”、そんなイメージです。

   しかし、枯れ草をかき分け地面を見れば、そこに瑞々しい緑の草が生えていて驚くことがあります。あるいは広場や路傍に紫褐色に変色し、地面にぴったり張り付いて葉を伸ばしている草があります。枯れているのではありません。それが、まもなく訪れるであろう春を待ち、じっと寒さに耐えている草の姿なのです。風景は枯れていても、“命”は決して枯れていないのです。

   今回は“地面にぴったり張り付いて葉を伸ばしている草”、つまり“ロゼット”から見ていきます。

                                            オニタビラコ(キク科) (2014 4/8)

                                            セイヨウタンポポ(キク科) (2015 4/2)

                                              ハルジオン(キク科) (2014 4/24)

 ロゼットという言葉は、元来はバラの花から由来する言葉です。茎を立ち上げず、葉は地際から直接出す根性葉(こんせいよう)の形をとって、バラの花のような形に放射状に広がっている植物のことです。

                                             シロツメグサ(マメ科)(2015 5/14)

                                               ジュウニヒトエ(シソ科)(2015 4/29)

                                              ユキノシタ (ユキノシタ科) (2015 5/30)

 このような形を取るのは、前年の終りに発芽し、冬を越してから春に成長する越年草(二年草、宿根草)に多く見られます。冬の間は寒さに耐えられるように地表に張り付き、しかも太陽の日差しを受けられるように広く葉を広げています。そして、春になるとその中央から茎が伸びて、背が高くなり、花をつけるのです。

                                          ゲンノショウコ(フウロソウ科)(2015 9/22)

                                              ヒメオドリコソウ(シソ科)(2014 4/8)

 地表面に張り付いているタイプのものだけでなく、このようにやや立ち上がっているものもロゼットの仲間に含めているようです。

※ 今回ロゼットをいろいろ取材し、少し詳しく取り上げたいと思いましたが、私自身の         不勉強でなかなか判別できず、簡単な紹介にとどめます。

※ 植物名の右側の (年 月/日) は花の写真を撮った日付です。

     ロゼットは全て今年の1 月上旬の撮影です。


      “春一番”見つけた

 ① 植物の生命力の強さ

   2013 年の半ばからホームページで植物の紹介を始めていますが、2014 年の元日の朝、東法面を見て回って驚いたことがあります。なんとそこにカタバミの花が咲いていたのです。それまでは“冬”と言えば“あたり一面、草の枯れ果てている季節”と思いこんでいました。花に出会えるとは思ってもいませんでした。

   あたりを見回せば、そこは空地になって東からの日差しが差している。北側は林に遮られ風よけになっている。つまりその場は期せずして陽だまりになっていました。珍しいことがあるものだと、ひとり合点したものです。

                  カタバミの花 2014 年1 月1 日撮影

                          寒いので葉を閉じている

 それから毎月団地の周りを見て回りましたが、年間通じて出会うのはカタバミの花です。図鑑には、カタバミの花期は“5~7 月”となっています。もちろん盛んに咲くのはその時期でしょうが、春先のまだ寒い時期にも、晩秋の枯葉の季節にも、別段狂い咲きしているようでもなく、自然に咲いているように見えます。夕方や、曇りや、寒い季節には花も葉も閉じてしまうのに、暖かい日差しがあれば季節を問わずに咲きだすようなのです。強い花です。年頭に“生命力が強い花の代表”として紹介できるのは、このカタバミをおいて他にないでしょう。

 さて、インターネットで「季節外れの花」で検索してみると、“冬でも暖かい日が続くと、草木が時ならぬ花を咲かせることがある”として、その花を「帰り花」「忘れ花」、あるいは「狂ひ花」呼ばれていることが記されています。

  しかし、ちょっと待ってください。“季節”を当てはめているのは人間の方です。草花は暖かい日差しに春を感じ取っているのです。寒い冬なのに花を咲かせているのです。「狂い咲き」というより「生命力の強さ」とも言えるでしょう。

  それで、この団地周辺や居住区も含めて、どんな花が見られるのか、この正月の数日間見て回りました。いろんな花が咲きだしていました。その中で、オオイヌノフグリ、オランダミミナグサまで咲きだしているのに出会うと、これはもう“季節外れの花”ではなく、“季節の先取り”ではないかと思い至りました。

  温暖化のせいなのか、暖冬のせいなのかは分かりません。そのいずれでもあるのでしょう。草花は暖かい日差しに春を感じてしまったのです。“まず初めに、春を先取りして”しまったのです。

  以下に、この正月に出会った草花をご紹介します。

 

  ※ 「春一番」とは気象用語で“立春から春分の間に、その年に始めて吹く南寄りの強        い風”のことですが、ここでは“まず初めに、春を先取りして咲きだした花”の意味を        あえて持たせています。

 ② 3 号棟南側

  ここは一番日当たりのよい場所でさまざまな野草の花が咲きだしているのが見られます。3 年前、東法面でカタバミの花を見つけた時、この場所も見ておけばよかったと後悔しています。

(左) カタバミ  (カタバミ科) 花期5~7 月 日当たりが良い分、こちらの方が生き生きと咲いている。

(右) ジシバリ  (キク科)      花期4~6 月 この季節にシジバリを見たのは初めて。 (1 月1 日撮影)

(左) タネツケバナ(アブラナ科) 花期4~6 月 側溝の中に生えていた。 (1 月1 日撮影)

(但し、その後溝掃除をしたため今は見られません)

(右) トキワハゼ(ゴマノハグサ科)花期4~11 月(1 月4 日)

いずれもよく見ないと、見落としてしまいそうなほど小さい花。

                 ハハコグサ(キク科) 花期4~6 月 (1 月1 日)

 ③ 団地南側入り口のサツキの根元

ムラサキカタバミ (カタバミ科)  花期5~7 月

 この花は、当団地入口のサツキの根元に咲いていた。これまでムラサキカタバミの群生を見たのは皇居内だけで、団地内では所々に一本ずつ楚々として咲いているのを見かけただけ。花期でもなく、初めは見間違いかと思った。 (1 月2 日撮影)

 ④ 中央広場、居住区

  中央広場でも花壇付近は5 号棟の陰になっているが、7 号棟寄りは日当たりが良いので、さまざまな野草が見られる。

(左) オオイヌノフグリ(ゴマノハグサ科)花期3~5 月

(右) オランダミミナグサ(ナデシコ科)  花期4~5 月

(ともに中央広場で1 月3 日撮影)

     ノゲシ(キク科)  花期4~7 月 (2 号棟西側 1 月2 日撮影)

 ⑤ 東法面

  オオキバナカタバミオキザリス・ペスカプラエ;カタバミ科)花期4~9 月

  南アフリカ原産。栽培種としてHP に紹介されている。また別のHP 情報では、花壇から飛び出し野生化し、関東以西に広がっているとの事。

 但し、『多摩市の植物目録』には載っていない。昨年12 月に、バス停裏付近の法面に咲いているのを見つけた。 (1 月1 日撮影)

  タカサゴユリ(ユリ科)花期7~9 月

   東法面と北駐車場と進入路の間に咲いていた。

   台湾原産。園芸用に移入後、野生化。風媒花で種子を大量に散布し、東北南部以西に繁殖域を広げている。花の多くは純白だが、写真のように赤紫色の筋が入るものもある。 (1 月2 日撮影)

  オニタビラコ(キク科)花期5~10 月

  道ばたや公園、庭のすみなどによく生える野草。花期は5~10 月だが、南の地方では一年中咲いているとの事。だから、当地でも今の時期に咲きだしたのではなく、暖冬で、秋からずっと咲いているのだろう。根生葉がロゼット状に広がっている。 (1 月4 日撮影)

  カタバミ(カタバミ科) 花期5~7 月

   今回も東法面のいつもの空地で探したが、その時は見つからなかった。

   1 月4 日に、少し日陰になったところに見つけた。3 号棟南側ではよく開いていたのに、半日陰のためか花も葉も半分閉じぎみだった。(1 月4 日撮影)

  ハナカタバミ (オキザリス・ボーウィー) (カタバミ科)花期10~11 月

当団地南東、緑化ブロックの下 (1 月8 日撮影)

   南アメリカ原産、江戸時代に観賞用に導入された。四国・九州など暖地で野生化。当地のものは、緑化ブロック工事の際にツツジの苗の土とともにもたら

されたもの。

『多摩市の植物目録』に野生化の報告なし。

   この花は、秋には緑化ブロックの下や側溝のあたりまで、一面花で埋めるほどに咲いているが、冬には花を見たことが無い。1 日から4 日に見て回った時には咲いていなかったが、8 日の曇りの日に見て回った時には写真のようだった。前日の暖かい日に咲きだしたのかもしれない。

  ⑥ 10 号棟脇の陸橋の上

  ホトケノザ(シソ科)花期3~6 月

10 号棟脇の陸橋で見かけた。赤い蕾を覗かせていた。(1 月11 日撮影)

 このようにさまざまな野草の花が見られました。寒い日には花を閉じてしまう種類が多いので、日差しがあり、暖かい日に、皆様も“春の兆し”を探してみてください。

 【 参考書 】

『野草のロゼットハンドブック』亀田龍吉著 文一総合出版

『花と葉で見わける野草』亀田龍吉・有沢重雄著 小学館

『山渓ハンディ図鑑1 野に咲く花』山と渓谷社

『多摩市の植物目録』 パルテノン多摩                                  〔写真・文 石川〕


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